【関西の議論】一晩4回、参院選でもやらかした〝選管ミス常習〟 あの市長まで平謝りの「異常事態」宣言
兵庫県西宮市の参院選開票作業で選挙区の票を数え直す職員たち。最終確定は大幅にずれ込んだ=7月11日午前1時49分
7月10日に投開票が行われた参院選の開票作業で、兵庫県西宮市ではミスが相次ぎ、選挙区の最終確定が当初の予定より大幅に遅れた。選挙区の投票者数と投票数が一致せず、約21万6千票を改めて数え直し、現場の報道陣に対する説明を二転三転させた。比例代表の開票終了時刻も訂正し、計4件のミスで混乱が続いた。市の開票ミスは報道関係者だけでなく、各候補者の陣営からも不安視されていた。というのは、市では平成19年以降(今回の参院選を除く)の8つの選挙で計9回のミスを起こしていたからだ。〝偏向報道〟への取材拒否など、メディアや議会と対立を繰り広げてきた今村岳司市長もさすがに「異常事態」との見解を示し、「原因をきちんと分析するよう選管に指示した」と強調。市選管は「由々しき事態であり、再発防止に努める」と繰り返したが、その言葉もむなしく響く。
「ミスではない」と強弁
「これは正当な確認作業です。ミスによるものではありません」
11日午前1時20分ごろ、参院選の西宮市開票所となった市立中央体育館で、選挙事務従事者の職員が突然、一度集計され、立会人の前に山積みされた選挙区の投票用紙を再び集計用の機械に通し始めた。
不審に思った報道陣が説明を求めると、同市選管の足立敏事務局長が繰り返したのが冒頭の言葉だった。
しかし、実際は投票数が投票者数より7票多く、全票の数え直し作業を始めていたのだ。詰め寄る報道陣に市選挙管理課の松本幸弘課長は「担当者からの聞き違いがあった」「勝手な思い込みだった」などと釈明に追われた。
ところが、はじめは「ミスではない」としていた市選管の説明はミス連鎖の序章に過ぎなかった。票の数え直しが、新たなミスの判明につながっていった。
次々とミスの連鎖
まずは、市内で期日前投票をした在外有権者6人の票を計上し忘れていたことが発覚。さらに、端数の96票としてまとめた投票用紙の束を、100票の束として誤って数えていたことも分かった。
市が想定していた選挙区の最終確定予定時刻は午前1時半。票の集計し直しで選挙区の最終確定は「午前3時1分」と大幅に遅れた。
市のミスは兵庫県全体の投票率にも影響を与えた。県選管は11日午前0時15分時点で取りまとめた投票率を53・73%と発表していたが、在外有権者6人の期日前投票の計上を怠っていた市の訂正を受けて総投票者数が増えたことにより、午前4時半に53・74%に修正した。
比例代表の開票終了時刻も訂正
選挙区は開票終了したものの、午前4時ごろまで市選管担当者による選挙区の開票ミスへの説明が続いた。
比例代表の最終確定が現場で発表されたのは午前4時すぎで、終了時刻は選挙区と同じ「午前3時1分」。開票所が閉鎖されたのは同4時半ごろだった。
開票作業中のトラブルについて改めて説明するため、市選管は午前10時から市役所で記者会見を開き、正式に投票者数と投票数を訂正し、足立事務局長らが頭を下げた。
会見中、記者から「比例代表の開票終了時刻がおかしいのでは」と質問が飛んだ。開票所で説明中だった3時ごろにはまだ比例代表の開票作業が行われていたからだ。市選管は「確認させてください」と会見を打ち切った。
午後2時からの再会見で、市選管は比例代表の開票終了時刻を「午前4時19分」に修正した。「午前3時1分」としたのは、比例代表の最終票をパソコンに入力後に印字した用紙に記載された時間で、「職員が勘違いして県選管に報告した」と説明。立会人や魚水啓子市選管委員長が最終的に確認したとする「午前4時19分」に変更し、県選管に報告し直したという。
選挙事務に携わった経験がある市職員の1人は市選管の迷走ぶりに「あまりにずさん」と嘆くとともに「開票作業が遅くなるほど従事者の人件費がかさんでいく。税金を納めている市民に申し訳がたたない」と話した。
8選挙で9回のミス
市ではこれまでにも、国政選挙や県議選、市議選でミスが相次いでいた。
昨年1月の県議補選では投票者数を70人多く数えるミスがあり、投票者数と投票率を訂正。25年7月の参院選と知事選の〝ダブル選〟では一部投票者数を二重計上、23年の市議選は選挙権がない市外転出の男性に投票用紙を交付…。19年以降8つの選挙で9回のミスが発生し、ミスが常態化しているのが現状だ。
今回の参院選でも、期日前投票が始まった6月23日、期日前投票所で嘱託職員が派遣職員に選挙区と比例代表の投票用紙を逆に渡し、有権者4人が誤って投票。魚水委員長は「あまりに初歩的なミスで有権者に申し訳なく思う」と謝罪した。
事態を重く見た市選管は7月4日、市役所内で投開票当日のリハーサルを行い、再発防止に取り組んだのだが、参加した職員はわずか5人。市職員の意識の低さが露呈した形で、市選管も「有効な研修方法を考えたい」とするのがやっとだった。
今村市長は参院選投開票後の14日の定例会見で、相次いだミスについて「大変申し訳ございません」と謝罪。「毎回ミスが続くのは異常事態だ」とした上で、「市民にきちんと改善策を説明できるようにしたい」と述べた。
意識改革の必要も
なぜ、こうしたミスが相次ぐのか。
選挙事務に詳しい神戸大大学院の品田裕教授(選挙制度論)は「一般論」と前置きした上で、「自治体の組織的な構造の問題である可能性がある」と指摘する。
品田教授によると、かつて全国の各自治体には選管職員以外にも、選挙事務に経験豊富な職員が多く存在し、各部署でノウハウが受け継がれていた。しかし、事務作業の合理化や効率化などに加え、正規職員が減少傾向にある一方で、経験の少ないアルバイト職員が選挙事務を担当する機会も増え、ミスが発生しやすい状況になっているという。
実際、県内の過去の選挙では従事者の意識低下ともとれる出来事があった。
26年12月の衆院選で神戸市北区の開票所でアルバイト職員が、私物の持ち込みが禁止されているにもかかわらず、菓子を持ち込み、投票用紙の仕分け作業に使う開披台で食べていた。当時、別の台では投票用紙の最終点検が行われており、開票確定前だった。
品田教授は「選挙は数年に1回行われるため、他の部署に比べて選挙事務のノウハウが蓄積しづらい」とした上で「選挙に強い職員を育てられるよう、選管での勤続年数を増やすことも選択肢の一つ。選管だけではなく、自治体全体でミス防止に向けた対策を考える必要がある」と語る。
今回の参院選では、新たに選挙権を得た18、19歳の新有権者に向けて、全国の自治体でさまざまな選挙啓発が行われてきた。投票率の向上も大事だが、選挙事務に携わる職員のミスにより、投票した有権者の票が無効になったり、開票終了が遅くなったりすることは、民主主義の根幹を揺るがしかねない。
自治体は「ミスなき選挙」のためにも職員全体に向けた啓発を徹底していく必要がある。
以上引用
堺市も結構ミスが多い、今回はミスなしだったが…
しかし、個人情報流出など、別な意味でのミスがあった。