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火星まで37時間、太陽系を移動する鉄道「ソーラー・エクスプレス」構想
文 = Kristin Tablang
2016年1月、カナダの重工業大手ボンバルディア創業者の孫で工業デザイナーのチャールズ・ボンバルディアが、超音速ジェット機(ニューヨーク--ドバイ間を22分で結ぶ)の構想を発表した。だが彼は今、さらに大きな目標を持っているようだ。
地球の枠を飛び出したその新たな構想は「ソーラー・エクスプレス」。天体と宇宙ステーションの間を行き来して人やモノを運ぶ、未来の鉄道だ。
重力を利用して速度や方向を変え、惑星や月の周りを移動するソーラー・エクスプレス(工業デザイナーのオリビエ・ペラルディと共同で設計)は、スキーのリフトのように絶えず動いており、そこにより小さな車両がついている。
”鉄道”は、全長50メートルのシリンダー状の車両を連結したもの。各車両(シリンダー)は4つの貨物室に分割することができ、メンテナンス・ロボットを使って飛行中に交換をすることが可能だ。
「シリンダーの縦軸の周りを大きな『スペース・シティ』が回転し、内部に重力を作り出す。これによって人間は、移動中の何か月もの間、そこで歩きまわり、生活をすることができる」とボンバルディアは説明する。
車両の構造や種類、機能はそれぞれ異なるが、(人工的に作られた)重力の影響が少ない中心部分は使用が制限される可能性が高い。また中心部には、実験用の無重力エリアも含まれる見通しだ。そして通常の重力下にある外側の区域が、人間の活動に使える部分となる。
打ち上げにはロケットブースターの力を借り、貯蔵燃料を使って、必要に応じて進路を調整する。速度は車両のサイズや目的によって異なるが、最大で秒速3,000キロに達する(光の速さの1%に相当)。
「宇宙空間に出た後に最も費用がかかるのは、加速と減速の段階だ」とボンバルディアは言う。「加速と減速にはとてつもないエネルギーが必要だからだ。だが巡航速度に到達してしまえば、電力消費量は最小限に抑えられる」
車両は前方と後方を強化シールドで保護されており、航路上にある流星物質などの障害物を排除すべく、ミサイルやレーザーを装備した”ドローン隊(小型無人機)”を伴う。
航路に沿って設置されたソーラーアレイ(太陽電池群)が吸収した太陽エネルギーは、照明設備や電子機器への電力供給に利用される可能性がある。乗客用の水は彗星や月から採取することになるだろう。また水は、代替燃料として使える「水素や推進剤をつくるのにも利用できる」とボンバルディア。さらに飛行中に捉えた小惑星は鉱物資源として利用できる可能性がある。
ソーラー・エクスプレスの最長航続距離については「無制限」だとボンバルディアは断言する。最初の便は、地球と月の間を往復して貨物と旅行者を輸送することになるだろうとの見方だ。理想とする秒速15キロのスピードで飛行すれば、およそ7時間で移動が可能だ。
「月が、そのほかのプロジェクトの発射台となるだろう。この種の鉄道は無重力の中の方が、組み立てや建造がしやすいからだ」と彼は言う。「次段階の候補は、火星だろう。特に火星を地球化(人間が住めるようにする)できるならば、候補としてふさわしい」
魅力的な構想だが、多くの問題もあり、実現できるのはずっと先のことだろう。「考えなければならないことがたくさんあるのは確かだ」と、ボンバルディアは認める。
「鉱物や素材、人間を太陽系のある地点から別の地点に輸送するシステムを考案することが目的だ。ソーラー・エクスプレスはたたき台であり、今後どう改善していけるかを解明していきたい」
ソーラー・エクスプレスのフライト時間(最大速度3,000キロ/秒で天体間の最長距離を移動した場合)
・地球-月(38万4,472.28キロ)→2.13分
・地球-太陽(1億5,200万キロ)→14.07時間
・地球-金星(2億6,100万キロ)→24.17時間
・地球-火星(4億100万キロ)→37.13時間
・地球-海王星(47億キロ)→18.13日
以上引用
鉄道には似つかわしいような外観ではないが、
銀河鉄道の原理が、なんとなく具体化しそうな発想が、ヒントがある。