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女性活用、3つの「失敗パターン」への処方箋

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東洋経済オンライン

女性活用、3つの「失敗パターン」への処方箋

清水 レナ:女性活躍推進コンサルタント
あなたの会社の女性社員は、自由なキャリア選択を出来ているでしょうか(写真:Graphs / PIXTA)

みなさん、こんにちは。女性活躍推進コンサルタントの清水レナです。

前回のコラムでは、女性社員に「辞めずに長く働いてもらう」ための支援と「積極的に管理職を目指してもらう」ための支援は、考え方も取り組み方もまったく違う、ということを解説させていただきました。

ただこれだけでは、「理屈はわかったけど、実際に取り組むのは難しそう……」と思われる方も多いことでしょう。そこで今回は、具体的なケーススタディを通じ、課題整理の方法や、その課題を解決するための具体的な取り組み例を紹介していきます。

■ケース1:女性社員の定着率は高いが、管理職を引き受けてくれない
従来、CSRや福利厚生の位置付けで女性活躍推進に熱心に取り組み、「育児休業や時短勤務の延長などにより、家庭と仕事を無理なく両立できるように支援する」「出産祝金制度などにより、子どもを産み育てることを奨励する」などの制度が十分に整っている。女性社員の産休・育休からの復帰率はほぼ100%と、定着率も非常に高い。
しかし、課長職に占める女性の割合は10%、部長以上に限るとわずか1%である。女性管理職率の上昇を目指しているが、管理職になることを打診した女性に固辞されてしまう例が続出している。

「”細く長く”が勝ち組」と思われていない?

このように、女性に「優しい」制度が整っているのに女性管理職率が増えない会社でみられる課題は、主に「子どもを持つ女性に過剰な配慮がなされ、難易度の高い仕事に挑戦する機会が与えられないこと」「 細く長く働きたい人に配慮した制度が充実している一方、子育てと管理職を両立したい人に向けた支援制度がないこと」、そしてこれらの要因が重なった結果「女性社員の昇進意欲が乏しくなってしまったこと」でしょう。

女性社員が「細く長く」働き続けられる環境を整えるのは、決して悪いことではありません。ただ、「それこそがより多くのメリットを享受できる道だ」と社員に見えていると、あえて管理職を目指す気持ちも起きず、女性たちを昇進から遠ざける結果を招くと考えられます。

このような企業を、仮に「過保護型」と呼んでみましょう。「過保護型企業」が女性管理職率を上げるためには、どんな手を打つべきでしょうか?

清水さんの著書『 輝く会社のための女性活躍ハンドブック』も発売中

まず有効なのは、子どもを持つ女性にも難易度の高い仕事に挑戦する機会を与えること。成功・失敗の両方を経験させ、管理職に必要な知識、経験、判断力などを培える場を用意しましょう。

女性の意向に応じた、フレキシブルな育児支援制度を整えることも重要です。昇進意欲のある女性ほど、キャリアの断絶につながらないよう、育児休業の長期化を避ける傾向にあります。そういった場合にはベビーシッター代を支給するなど、会社が子どもの保育の保証をし、早く復帰できるようなサポートをすると効果的です。

そもそもアプローチすべきは、すでに出産・育児を経験した女性社員だけに限りません。若手女性向けのキャリア教育では、退職すること、仕事をセーブすることのデメリット、そして働き続けること、管理職を目指すことのメリットを戦略的に伝えていきましょう。

これらの施策から、「将来は管理職を担ってほしい」という会社のメッセージが女性社員たちにも伝わっていくはずです。

「完全平等」でも、うまくいくとは限らない

それでは、次のケースを見ていきましょう。

■ケース2:管理職候補となる女性を採用しても、じきに辞めてしまう
新卒採用時には、女性の正社員・総合職を男性と同数採用。能力も意欲も高い女性が多く、事実、若手営業社員の成績上位者に占める女性の割合も高い。
しかし、女性社員だけの定着率が極めて低く、新卒で入社した女性社員は、入社5年目までに半数が退職してしまう。
人事制度は完全な実力主義を掲げ、「男女平等」「機会均等」の理念に基づき「成果を出す人材への適正な評価」をしている。ただし、子どもの有無、介護の有無など、社員の個人的な事情には、特に配慮していない。

こちらは「弱肉強食型」とでも呼ぶのがいいでしょうか。このケースのように、「男女平等」「機会均等」をしっかり掲げているにも関わらず、女性だけが辞めてしまうという会社も、昨今増加傾向にあります。

このような組織が抱えがちな課題は、「長時間労働を前提とした仕組みであり、時間的制約条件を抱えた女性が働き続けられないこと」、そして「ライフイベントを持つ女性たちが、将来長く活躍するイメージを持てないこと」ではないでしょうか。

言うまでもありませんが、出産は女性にしか担えません。また日本では、たとえ共働きであっても、家事労働の負担が圧倒的に女性に偏っている状況です。そんななか、ビジネスだけ完全に男女平等にしてしまっては、女性は昇進を目指すどころか、働き続けることすら難しいのです。

こういった会社ではまず、時間的制約のある人が不利にならないルールを設定するとよいでしょう。たとえば、社内の会議を10~15時のコアタイムに集中させる、朝礼を廃止して個別伝達にする。これで時間的制約がある人でも、意見を述べたり、業務の進捗を把握したりすることが容易になるでしょう。

そしてもう一つ、長時間かけて成果を出す人ほど評価されるような風潮を改めることです。時間当たりの労働生産性を重視して評価することで、短い時間でも効率的に働く人を正当に評価することで、時間的制約のある女性でも管理職候補になれるでしょう。

「男女平等」「機会均等」という方針を貫く場合でも、このように評価の「軸」をちょっと変えてやれば、「この会社で長く活躍できるかも」と前向きに考えられる女性社員が増えてくるはずです。

「女性には任せられない空気」が蔓延する職場

さて、最後のケースを見ていきましょう。

■ケース3:管理職になる条件を満たしている女性はいるが、登用されていない
過去、女性は秘書などのアシスタントとしての採用が中心だったが、20年ほど前から総合職女性の採用を積極的に行っている。
しかし、未だに「女性には管理職を任せられない」という風土が根強く、女性は管理職に昇進できない。もしくは、昇進できたとしても、明らかに男性よりも遅い。
中間管理職層も、女性に難易度の高い仕事や社外折衝が伴う業務を与えていない。そのため女性社員からは「仕事にやりがいを感じられない」「成長実感がない」といった声が上がっている。優秀な女性社員が転職する事例も頻発している。

このケースのように、優秀な女性を採用しても女性管理職が増えない、という会社もよく見られます。無理もありません、そもそも上層部や中間管理職が女性を管理職候補と見なしていない「化石型」企業なのですから。

課題を整理しますと、まず「女性には任せられない、という風土を修正する努力が成されていないこと」、ゆえに「女性には管理職として必要な業務経験を積む機会が与えられていないこと」、そして「すぐに女性のやる気が失せてしまうこと」が大きいと言えるでしょう。

当たり前のことですが、機会を与えられないことには、男性だって女性だって、成長することはできないのです。このような企業が打つべき施策は山ほどありますので、順を追って説明していきます。

まず何よりも「管理する側」の意識改革を行っていくことから逃げてはいけません。女性を育成する立場にある中間管理職向けには、女性活躍推進の必要性を伝える研修や講演を行いましょう。

その際に最も重視すべきメッセージは、女性活躍推進が男性にとっても、会社にとっても、非常に大きいメリットを生むということ。これまでの記事で紹介してきたようなデータや理論も交え、会社の本気度をしっかり伝える。具体的な育成方法のトレーニングも必要ですね。

先進企業の真似だけではうまくいかない

もうひとつ重要なのは、女性の教育に投資を惜しまないことです。論理的思考、法務、会計、マーケティングなどのビジネススキル、そして部下育成、コーチングなどのヒューマンスキルまで、幅広い研修の機会を、社内外のリソースを使って受けられるようにしましょう。

幹部登用を前提として、女性社員を男性幹部の補佐役(アシスタントではなく、参謀的な意味合い)に抜擢するのも効果的です。会社の意思決定のプロセスや全社の業務を大局的に捉えるスキルを身につけることができますし、優秀な女性には、だんだんと責任感ややる気が芽生えるはずです。

女性管理職比率の引き上げは、非常に難易度の高いテーマ。しかも企業ごとに女性活用へのスタンスや取り組みのフェーズがまったく異なるため、思いつきのアイデアを試したり、先進企業の取り組みを真似したりする程度では、なかなか思い通りの結果が得られません。

まずは今回取り上げた3つのパターンをご参考に、自社の現状と課題を的確に把握してください。そのうえで、課題にあった適切な施策を行っていくことが重要なのです。



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