阪堺電車の廃レールで包丁製作…堺の打刃物職人
2014年06月28日
廃レールから作った包丁を見せて、「堺の歴史と伝統が詰まっている」と話す榎並さん(26日、堺市堺区の榎並刃物製作所で)=大久保忠司撮影
「刃物のまち」で知られる堺市の打刃物
うちはもの
職人が、市内を走る「阪堺電気軌道」(阪堺電車)の廃レールを再利用して、包丁を生み出した。非常に硬いレールの鋼材は、鋭い刃先に実はぴったり。後継者不足に悩む中、意外な組み合わせでアピールを狙う。
製作したのは、堺市内の打刃物職人らでつくるグループ「小鍛冶
こかじ
会」。
阪堺電車は、100年以上の歴史がある府内唯一の路面電車。メンバーの榎並
えなみ
正さん(51)が「堺の街を見守り続けてきた阪堺のレールで、堺伝統の包丁を作りたい」と阪堺側に提案し、使用年数30年の廃棄用レールを無償で譲り受けた。
長さ2メートル、重さ約100キロのレール1本を、幅約8センチの板にカットして鉄と合わせ、成形。小鍛冶会の研ぎ職人や柄付け職人が包丁に仕上げた。
電車レールは鋼材で、長期間、車両の重みに耐えられるよう炭素成分を特別に多くし、ビルの鋼材や自動車製品より何倍も強い構造になっている。
一方、打刃物では、刃先の部分の鋼が硬いほど切れるといい、レールからできた包丁は、非常に良い切れ味に仕上がったという。
榎並さんにとって、阪堺電車は幼い頃からいつも乗っていた愛着ある電車だといい、「レトロな車体でガタゴト走る電車と、切れ味抜群の包丁は、どちらも堺の魅力。この組み合わせで、堺自慢の歴史や伝統に思いをはせてほしい」と言う。阪堺電気軌道の担当者も「『そんなことができるのか』と驚いたが、ともに歩んできた堺が誇りとする包丁の材料にしてもらい、うれしい」と喜んだ。
長さ2センチに切ったレールつきで2万5000円(税別)。35セット限定で、6月30日~7月19日に注文を受け、9月上旬に発送する(多数の場合は抽選)。申し込みは榎並刃物製作所のファクス(072・233・0232)へ。
悩みは後継者不足
堺の打刃物は、安土桃山時代、タバコの葉を切り刻むために包丁を生産したことから発展。切れ味の良さが評判を呼び、江戸時代には全国で名が広まった。現在も、国内外の多くの料理人から受注しているという。
しかし、近年は若い後継者が不足。「堺刃物工業協同組合」によると、鍛錬所は約40年前は40~50か所あったが、現在は16か所に減少。小鍛冶会は、若者らに関心を持ってもらおうと、実演イベントを開くなどの活動をしている。
2014年06月28日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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