高齢ドライバーの交通事故を減らそうと、熊取町の自動車販売店が面白い取り組みを始めた。普段の運転状況を録画して見直してもらうため、ドライブレコーダーを無料で貸出。本人は大丈夫だと思っていても危険な運転をしている高齢者や、親の運転を心配する息子や娘も多く、現実をそのまま映し出すドライブレコーダーの映像を“直視”することで、運転操作や免許の返納について家族で話し合うきっかけをつくるのが狙いだ。
無料貸し出しを始めたのは下中(しもなか)自動車の専務、安芸(あき)幸司さん(44)。自動車の販売・修理や保険を取り扱う中で、顧客から「親の運転が危ないので免許を返納するように説得してほしい」と頼まれることが増えたのがきっかけだった。
「さすがに私が『運転をやめた方がいい』などとは言えないが、家族で話し合うきっかけになるかもしれない」。そんな思いからドライブレコーダーの貸し出しを考えついたという。
安芸さんによると、高齢ドライバーの事故は日常茶飯事で、「自宅の車庫でぶつけた」「溝に脱輪した」など、毎日のように修理の依頼がある。「アクセルとブレーキの踏み間違いも週に1、2回はあるぐらいで、ニュースになっているのは氷山の一角に過ぎない」(安芸さん)という。
ドライブレコーダーはフロントガラスに取り付けて3日間ほど乗ってもらった後、店で家族と一緒に映像を確認してもらう。4月から始めてこれまでに80代が2人、70代が1人の男性計3人が使用。いずれも車の傷が多いのが気になっていた顧客で、安芸さんから家族に「こういうサービスを始めたのでやってみませんか」と提案して実現した。
映像にはブレーキの遅れなど危険な運転操作が記録されており、「気を付けないとあかんな」と話す人もいれば無口になって機嫌が悪くなる人も。家族からは「いくら本人が『大丈夫』といっても、映像は証拠にもなる。返納も話し合ってみます」と感謝されたという。
一方、安芸さんが課題だと感じているのは、免許を返納した後の高齢者の“足”の不足だ。町内の公共交通は十分ではなく、高齢者だけの世帯では、車がないとたちまち買い物弱者になるリスクもある。
実際、週末に子や孫に来てもらい買いだめをしている家庭や、免許返納を機に、堺市や大阪市内の駅近マンションに引っ越した世帯もあるという。
「不便さを考えると、車を運転したいという高齢者の気持ちも分からなくはない。ただ、『まだ大丈夫』と乗り続けた結果、人身事故を起こしている人が多いのも確かだ。一度、ドライブレコーダーをつけて自身の運転状況を確認してみてほしい」と話す。
無料貸し出しは当初、顧客向けのサービスと考えていたが、多くの人に利用してもらうため、顧客以外でも受け付けることにした。台数に限りがあるため予約が必要。問い合わせは、下中自動車(電)072・453・1135。
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なかなか良い取り組みである。