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堺市長選 維新敗北 敗戦に善みな者は滅びず

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堺市長選 維新敗北 敗戦に善みな者は滅びず
産経新聞 10月8日 15時6分配信
【西論】編集長・堀川晶伸

 一つのエピソードから始めたい。

 堺市長選が後半を迎えた9月23日、市内の中学校で大阪維新の会の公認候補の講演会が開かれた。聴衆は約600人。日本維新の会の石原慎太郎・共同代表も姿を見せ、応援に立った大阪維新の会の橋下徹代表(大阪市長)は語気を強めた。

 「今、朝日も産経も大阪都構想について、いろんな説明をしています。ただ、説明しようと思ったら千ページぐらい必要。朝日や産経がやっていることなんて、2行分ぐらいですよ」

 橋下氏はこの演説会の後、石原氏に「戦況はかなり不利です」と打ち明けている。大阪都構想への参画を争う選挙で、有権者への理解が進んでいないといういらだちが新聞批判になったことは想像に難くない。

 しかし実際の聴衆の反応は、橋下氏の受け止め方より、さらに厳しいものだった。講演会を途中で退席した40代の男性はこう言い放った。

 「『2行分しかない』って言っていたけど、じゃあ橋下さんが都構想を説明してくれたんか?って言いたいわ」

 前述の通り、堺市長選は大阪市と大阪府を再編する大阪都構想に堺市が加わるかどうかが争点だった。選挙が終わった今、現職が再選を果たした理由として「都構想に入れば堺がなくなる。堺をなくすな」というフレーズを訴え続けたことが「自治・自由の街」として歴史を育んできた堺市の有権者にアピールした-という見方が一般的だ。

 橋下氏自身、開票日の29日夜の記者会見で「都構想で堺がなくなるという全く間違ったメッセージが市民に広がったのは残念」と語った。「堺市を特別区に分ける手続きなどを、きちんと説明すれば勝敗はわからなかった」という思いがにじんでいる。

 だが説明が足りなかったのは「堺市がなくなるかどうか」という単純な事柄だけだったのか。そこには、都構想が抱える重要な問題が潜んでいる。

 ◆打ち消しあった切り札

 大阪市立大大学院の砂原庸介准教授は、著書「大阪-大都市は国家を超えるか」(中公新書)のなかで、大阪都構想は「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」という2つの論理を内包していると分析している。

 前者は強力なリーダーシップのもとでインフラなどを整備し、大都市としての成長を追求する考え方。後者は金の無駄遣いをなくし、民営化でコストカットを図ることで、住民の支持を得る考え方を指す。単純化すれば「強力な行政」と「住民の目線」という考え方と言い換えてもよいだろう。

 ここで重要なのは、砂原氏が「財源が制約されている現代では、2つの論理は一方を追求すれば、他方を犠牲にせざるを得ないトレードオフ(二律背反)の関係になりがちである」と指摘していることだ。

 ところが、大阪維新の会は、都構想について、これまで2つの考え方が両立することを前提としてきた。「強力な行政」で、経済などの閉塞(へいそく)状況を打ち破ることを旗印に掲げる一方、「住民の目線」は、公務員の厚遇問題など市民の支持を得やすい問題を強調。選挙では、2つの考え方をともに訴えることで、有権者に「都構想にイエスかノーか」を迫る“必勝パターン”をつくり出してきた。

 だが今回の堺市長選では、「住民の目線」に、堺市の分割という現実の課題が具体的に浮上し、大阪全体の発展を目指す「強力な行政」と対立する結果となった。今回、大阪維新が敗北した真の原因は、これまで有効に機能してきた2枚の“切り札”の効果が、初めて打ち消し合ってしまったことにあるといってよいだろう。

 「強力な行政」と「住民の目線」の考え方が対立した場合、都構想というシステムでは、どちらが優先され、どのような手続きで解決されるのか。行政に対し、住民側からの「異議申し立て」はどこまで可能なのか-。今回の堺市長選で橋下氏が本当に説明すべきだったのは、こうした有権者の疑問や漠然とした不安に対する丁寧な回答だったのではないだろうか。

 ◆「現実」を示すときだ

 記者として大阪府庁を担当していた頃、年末になると当時の大蔵省の新年度予算の原案内示や復活折衝の取材で東京に出張した。正直、優先順位が到底高いとは思えない地方の道路や施設などの整備に巨額の経費が計上される一方、国家として取り組むべきインフラ関連の予算が見送られる状況を目の当たりにして「霞が関の壁」は現実に存在することを痛感した。

 そうした文脈において、都市型の地域政党として誕生した大阪維新の会の存在意義が、今回の選挙だけで直ちに失われたと見るのは尚早だろう。大阪の地盤沈下は現実であり、行政として解消を図る取り組みは欠かせないと考えるからだ。都構想だけがクローズアップされているが、現在、府と大阪市が広域行政について協議を進めている「府市統合本部」を、より積極的に活用する方法などもあるだろう。

 橋下氏は平成27年4月の都移行を目指す日程に変更はないとしている。だとすれば、今回の選挙結果を踏まえ、今後予定される府、市議会での論議や住民投票に向け、都構想において、大都市の発展と身近な地域の自治のバランスをどのように取るのかを、明らかにしていくことが不可欠だ。

 「戦いに善(たく)みな者は敗れず、敗戦に善みな者は滅びず」(「漢書」刑法志)

 看板施策を「理念」だけで語ることができた時期は終わった。その「現実」を明らかにし、住民の理解と納得を得る努力こそが、大阪維新の存亡に直結している。


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