育児に参加する男性を表す「イクメン」という言葉を耳にする機会が増えてきました。イクメンのなかには、保育園への送迎を担当するパパもいます。そこで今回は、自転車に関する多くの本を執筆し、自転車を使って通勤する「自転車ツーキニスト」である疋田智さんに、送迎に適した自転車選びのポイントをお聞きしました。ご自身もお子様を保育園へ送っているという疋田さんがおすすめする子乗せ自転車とは? 日経DUALでは、1.お互いに扶養に入っていない共働き世帯、2.妻が夫の扶養に入って働く共働き世帯、3.妻が専業主婦の世帯、という3つのグループにアンケートを取り、「共働き夫婦の本音と実態」というリポートを作成しました。 その中で「男性が具体的にどんな子育てを担当しているか」について聞いたところ、「入浴」や「外出に連れていく」「おむつ替え」「トイレの付き添い」などは、グループ間での差はほとんど見られませんでした。しかし、保育園・幼稚園への送迎については、グループ間で大きく違いがありました。具体的には、共働き世帯の場合、パパが送迎をしている割合が多いことが分かりました。 ブリヂストンサイクル広報担当の竹中理氏によると「最近は、イベント出展などにおいて、男性が積極的に子乗せ自転車の説明を聞いているシーンを目にするようになりました。育児に積極的に参加される男性が増えてきたこともあり、通園時に男性でもかっこよく乗っていただけるブラックやブラウン、艶消しカラーが定番化しています」とのこと。子どもを通園させるために、子乗せ自転車を求めるパパが増えているのです。 そこで今回は、ご自身もお子さんと保育園に送っているという、自転車ツーキニストの疋田智氏に「子どもを乗せる自転車選び」のポイントについてお聞きしました。 ——疋田さんは、7歳、5歳、2歳のお子さんがいらっしゃいますね。以前は歩いて通園されていたとお聞きしていたのですが、ここ数年は自転車で通園されているとのこと。なぜ通園に自転車を使おうと思ったのですか? 理由を一言で言うと、2つの楽、つまり「楽ちん」と「楽しい」から。特に「楽しい」ですかね。子どもと自転車に乗っていると、その時間はじっくり話ができますし、子どもの成長を肌で感じることもできます。 例えば2歳の娘は犬がいるとすぐに指さして「わんわん」と言います。また「あか、あか」と言っているので、何のことなのかと見回してみると、そこにポストがありました。なるほど、今、色に興味がある時期なんだなと思いました。このように、子どもの成長を肌で感じられるということは、とても大切なことだと思います。また、歩くよりも通園にかける時間を短縮することもできます。朝の時間は貴重なので、その点でも徒歩より「楽」になりましたね。 しかし「楽しく」て「楽」だとはいえ、安全性は確保する必要があります。そのカギを握るのがチャイルドシートです。以前は、ハンドル部分にチャイルドシートを引っかけるタイプが主流でしたが、これだとハンドルがふらついて慣れないと危なかった。しかし現在は、ハンドルの真上にチャイルドシートを設置するものが多いため、ハンドルもふらつかなくなっているんです。 ——チャイルドシートの位置が重要だったんですね。でもチャイルドシートって、子どもが大きくなったら要らなくなりますよね。数年のためにチャイルドシートを買うのは、ちょっともったいないような気もします。 確かに、送迎が必要な期間が終わると、「子乗せ」は不要になりますね。もったいないと思う気持ちも分かります。でも、最近の自転車はそこもちゃんと考えられていて、「子乗せ」を「カゴ」に付け替えられるようになっているんです。自転車に大きなカゴが付けば、お買い物をするときも便利ですよ。たくさんの荷物を入れてもふらつきません。で、子乗せはヤフオクで売る。これならもったいなくないですよね。 ——疋田さんは、送迎用の自転車に「電動アシスト」付きの自転車を選択していますが、自転車好きで知られる疋田さんが電動アシスト付きを選ぶのは意外な感じがします。 確かに、自転車好き(特にロードバイク好き)が自転車を選ぶ際、電動アシストは選択肢に入っていないという傾向がありますよね。ただ、子どもを乗せるとなると、話は変わってきます。電動アシスト付き自転車は、子乗せ自転車として非常に適しているんです。例えば、坂道などを気にせず使えること。都内を自転車で走ってみると、驚くほどアップダウンが多く、子どもを2人乗せて坂道を登るのは至難の業。しかし電動アシスト付き自転車なら、坂道も苦になりません。坂であろうが平たんな道であろうが、スムーズに進むことができます。 それだけではありません。電動アシストが付いていない自転車と比べると、安全性も大きく違ってきます。自転車に子どもを乗せる場合、脚力に自信がある人でも、どうしてもこぎ出しがふらつきます。自転車はある程度以上のスピードが出ないと安定しませんから。しかし電動アシストであれば、こぎ出しも非常にスムーズでふらつくことがありません。安全という観点からも電動アシスト付き自転車に軍配が上がります。 ——最近の電動アシスト付き自転車は、バッテリーの持ちはいかがでしょうか。 車種にもよりますが、1回の充電で40km~60km程度走ります。以前の電動アシスト付き自転車は20km程度でしたから、2~4倍長く走れるようになりました。だから、通勤にも十分使えます。実際、わたしも子ども達を保育園に送った後は、そのまま自転車で通勤しています。今日も自転車で通勤してきましたよ。 ——他にも注意すべき点があったら、教えてください。 自転車がきちんと止まることも重要です。大人1人と子ども2人を乗せると、総重量は100kgを優に超えますから、ブレーキが掛かりにくくなります。しかし最近の自転車は、強力な制動力を持つVブレーキや、ブロックパターンのある太いタイヤを採用しているため、自転車がきちんと止まるようになっているんですよ。 車種の選び方にもコツがあります。カタログを見て、「幼児2人同乗基準適合車BAAマーク」(下記を参照)を取得したものかどうか、よくチェックしてください。 ヤマハやパナソニック、ブリヂストンといった大手自転車メーカーでしたら、バッテリーを固定してあるシートポスト周辺にマークがついているはずです。それがついていれば、メーカーごとに大きな違いはないので、あとは好みで選ぶとよいでしょう。 ——これはあったほうがいいというオススメオプションはありますか? バックミラーはオススメですね。後ろの様子が分かるので、安全に運転できます。自転車は左側通行ですから、右後ろのクルマの動向を知ることは重要です。右側があれば十分でしょう。また、ヘルメットは必須です。自転車の死亡事故原因を調べると、頭部の損傷が圧倒的。警察庁が発表している資料(警察庁「自転車対策検討懇談会」での配布資料16より)では、68.2%が頭部損傷という結果が出ています。命を守るため、ヘルメットの着用は必ず実行してください。なにも、スポーツタイプのヘルメットである必要はないので、好みに合ったものを選んでください。最近は、帽子に見えるようなおしゃれなものもありますよ。 ——自転車を運転するうえで、気を付けるべきことがあれば教えてください。 左側通行は、順守してください。歩道を走っていても、自動車の進行方向と同じ向きで進むこと。その理由は、自動車から自転車が見やすい位置にいる必要があるから。交差点の事故は、右側通行していたために起きるケースがとても多いのです。 できれば、歩道を走るより、車道を走ったほうが安全です。そのほうが車から見やすいですし、段差が少ないから転ぶ心配も少なくなります。安全を確保しつつ、自転車による通園・通勤を楽しんでください。 (文/秋葉けんた イラスト/三井俊之)パパの目線で選ぶ子どもを乗せる自転車
日経DUAL保育園・幼稚園の送迎はパパが担当
前後に子どもを乗せて通園する疋田さん自転車での送迎は「楽しい」
アンジェリーノプティットe(ブリヂストンサイクル)のチャイルドシート。ハンドルの中央にチャイルドシートが配置されているのが分かる
アンジェリーノプティットeのチャイルドシートは、バスケットに変更できる電動アシスト付き自転車は子乗せニーズに最適
アンジェリーノプティットe(ブリヂストンサイクル)のブロックタイヤ。太いタイヤを採用することで、制動力がアップしている
BAAマークと幼児2人同乗基準適合者のマーク
アンジェリーノプティットe(ブリヂストンサイクル)
PAS Kiss mini(ヤマハ発動機)子どもの命を守るための工夫を
バックミラーの装着例
おしゃれなヘルメット「カポル」(日本パレード)
事故の中の71%が交差点で起きている(国土交通省の調査より)。歩道を走っていても、右側通行の自転車は自動車から見えないので、危ない
緩いカーブも危険地帯。自転車は必ず左側通行で!
イクメン・・・まずは自転車でのパパの送迎から始めてみませんか・・・
イクメン・・・まずは自転車でのパパの送迎から始めてみませんか・・・